●プロアスリートのうつ病率が高いのはなぜ?
驚くべきは学生アスリートよりもプロアスリートの方が、そしてプロアスリートの中でも
「トップアスリート」の方がうつ病になりやすいということです。
実際に、競技上位25%にいる選手のうつ病の頻度が他の選手よりも2倍高いそうです。
トップアスリートは常に注目されることで「強靭なメンタルを上回る強いプレッシャーや不安」
に襲われるからだと言われています。
最近ではうつ病や不安障害を公表する選手が増えてきましたが、それでもなお
「アスリートはメンタルが強くないと一人前ではない」という風潮も残っています。
その結果、成績不振や怪我などの問題から生じる心の不調を一人で抱え込んで深刻化させてしまい、
競技の辞退につながることもあるようです。
心の不調が原因で競技を引退しても、残念ながら「引退=問題解決」ではありません。
現役アスリート特有の要因があったように、引退後にも特有の要因があるのです。
●選手時代よりも深刻?引退が与える精神的ダメージとは?
アスリートの心の問題は現役中に限ったことではありません。
むしろ引退後の方が心のバランスを崩しやすく、メンタルヘルスに長期的に悪影響をもたらすことがわかっています。
原因は大きく2つに分けられます。
①「引退の経緯」
自らの意思で引退する選手と比べて、戦力外通告や怪我などの「不本意な引退」はうつ病や睡眠障害、
不健康な食生活が目立ち、生活の質が低下し生活満足度が低くなると言われています。
他にも「喪失感」や「やり残したこと」が原因となって、運動や健康を害する身体的合併症などを
発症するケースもあります。
②「アイデンティティの喪失」
選手時代に苦しめられた不安から開放されてもなお、スポーツ選手が「うつ病」に陥る原因は、
「自分が自分ではなくなるから」と言われています。
「アスリートであることがアイデンティティ」だと考えている選手こそ「引退=社会的な居場所を失う」
という意味合いが強くなります。
アイデンティティの喪失は、無価値感や抑うつ、不安、敵意、怒りなどの精神的苦痛を引き起こします。
そして、薬物乱用や飲酒、ギャンブルなどの不適切な方法で対処するようになる選手もいます。
引退後に職を探さなければならないという焦りを抱える一方「自分が何をしたいのかわからない」
「スポーツ以外何もできない」と将来の見通しが立てられないことも、さらにストレスに追い打ちをかけます。
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